※記載されているプロフィールは取材時のものです。
絵本は、親子で一緒に英語の世界にふれ、想像力をふくらませて自由に楽しんでいただけるメディアです。一方で、小さいお子さまや英語が得意でないおうちのかたにとっては、活用が難しいと感じられることも多く、ご質問もよく寄せられます。今回はそういったご質問に、イベント監修の清野明子先生にお答えいただきました。
児童英語教師。英語教室Bright主宰。2児(女の子)の子育て真っ最中
<会員のかたからの質問>
Q.うちの子は絵本に興味がないのですが、どうしたら良いでしょうか? (2歳女の子のおうちのかた)
絵本を読んでもらうのがいやな子どもはいないと思います。きっとどの子にも、動物の絵本、電車の絵本、子どもがでてくる絵本、しかけ絵本、写真の絵本...など、すでに何かしら好きなタイプの絵本があるのではないでしょうか。「何の本がいい?好きな本を持っておいで」と言われると選べない場合は、「こっちとこっちどっちがいい?」と選択肢を与えてあげると選びやすくなります。自分の子どもをみても、じっくり選んで持ってきたというより「本当にこの本がいいの!?」と思うときがありますが、それはそれとして持ってきた本を読んであげていると、選んだ本は読んでもらえるものだということがわかり、少しずつ子どもなりに読んでもらう本を吟味するなど、深まっていくのではないでしょうか。もし、いろいろな絵本を読んであげようとしても子どもが選んでくるのが同じ本ばかりで、たまには新しい本も読んであげたいなと思うときには、「今日はママはこの本を読みたいな~、聞いてくれるかな?」と、おうちのかたがリードしてあげてもいいと思います。
もし、絵本よりも英語の歌を聴くことのほうに興味がありそうならば、WKの絵本にはCDがありますので、CDで耳からインプットして絵本にうつっていく、という方法も考えられます。また、リズムの良い絵本、くり返しの多く出てくる絵本を一緒に読んで、絵本は読んでもらうだけでなく、自分にも読めるものなんだ、という気持ちや自信が育つと、また違った絵本の世界を楽しめるようになると思います。
ある絵本の読み聞かせの講座に行ったとき、「子どもたちは絵本を読んでくれているときのママが好きなんだ」ということを教わりました。なるほどそうですね!直前まで子どもを叱りつけていたとしても(!!)絵本を読んでいる間は優しい顔、声にならざるをえません。絵本を読みながら、何度もほほえんで、何度もキッスをして...。絵本の時間はふれあいの時間、そんな時間を大切に過ごしたいものですね。
<会員のかたからの質問>
Q.絵本の読み方で、文章の通りに読むのが良いのか、説明を付けて読むのが良いのか迷います。ちなみに家では、ついつい説明をつけてしまいます。
(4歳女の子のおうちのかた)
「説明」とは「訳」のことでしょうか。もし「訳」の意味であれば、訳してあげる必要はないと思います。絵本は絵が強いメッセージをもっていて、絵を見ればだいたいのことはわかるからです。「あっ、○○くんもこれとおんなじの持ってるね~」とか「かわいいね~」と共感や理解を助ける発言や問いかけであれば、それはぜひしてあげてほしいと思います。英語の絵本を読んでいると、わかっているのかな、理解できているのかな、と不安になりがちですが、子どもが笑顔で聞いたり見たりしているのであれば、いちいち説明してあげなくてもいいと思います。子どもは日本語の絵本でも犬がでてくれば「ワンワン」といって指差したり、おかあさんらしき人がでてくれば「ママ」といってさわったり、わかることを示してくれますね。子どもが単語で言ったのを受けておうちのかたが文にして返すという、日本語の絵本を読むときには自然にやっていることを、英語でもやってあげるようにすると良いかと思います。子どもが「くっく」とうれしそうに靴の絵を指差したら、「そうだね、○○ちゃんと同じ青いお靴だね」というふうに...。英語でのやりとりであれば、"Hat!"と子どもが絵本の中の帽子を指差して言ったら、それを受けて"That's right! It's a hat! It's a red hat like ○○chan's hat!"といったやりとりが可能かなと思います。
ただ、絵本をそのまま読むのも大事です。ページをめくるたびに"What's this?"と聞いたり、自分の言葉に替えて話してしまっていては、リズムよく繰り返しが多い、楽しく美しいお話の流れが途切れ途切れになってしまいますし、interaction(インタラクション)ではなくinterference(妨害!)になってしまいかねませんから。
絵本を親子で楽しむ際、基本は「一緒に読む」です。私がここ数年教室でも力を入れているのが、Shared Readingとよばれる方法です。「読み聞かせ」(read to your child)というよりはread with your child なのです。3~4歳になれば、覚えているところは子どもに言ってもらうことで、あたかも自分ひとりで読んでいるかのような感じにしてあげることができます。Stage1の絵本"Broom Zoom Choo Woo"を例にとってみましょう。この本は英語の絵本の特徴の一つである「頭韻」という形をとっています。「あっちゃん、あがつく...」の英語版のようなものです。擬態語を英語でonomatopoeia (オナマタピア)と言いますが、この本では実にたくさんの楽しい擬態語がでてきます。こちらが"Bertie Bear's bicycle goes...?"とはじめると、子どもは"Tring-a-ling-a-ling"と返してくれます。そんなやりとりからはじめられてはいかがでしょうか。こうでなければならない、と型にはめてしまうのではなく、こんなこともあんなこともやってみようか、というやわらかい気持ちで取り組んでいってほしいと思います。
清野先生とお子さまたちの"Shared Reading"の様子。5歳のお姉ちゃんは自分ひとりで、2歳の妹さんはおかあさまのマネをして、"choo choo choo"と発語しています。
絵本の活用が難しいのは、お子さまがなかなかひとりで英語の絵本を読めるようにはならない、ということです。これは幼稚園生、小学生でもそうです。おうちのかたが一緒のほうが望ましいものの、DVDならひとりでも見ていられるし、おもちゃやゲームなどもひとりでも取り組めるものです。絵本が読めるようになるためには、時間と根気そして努力が必要です。ただ、最初はとにかく愛情いっぱいでたくさんの絵本をくり返し読んであげることが大事だと思います。あせらず、あきらめず、おうちのかたの声で、またCDをかけながら絵本を見せてあげて、たくさんの美しく楽しい発音やリズム、効果音に触れさせてあげると良いと思います。
私の教室ではほとんどの幼稚園生がレッスンごとに絵本をじょうずに音読してくれます。最後に、 私自身が教室の子どもたちをみていて効果ありと思う方法をご紹介しましょう。読み聞かせするだけではなく、子ども自身が読めるようになってほしいと思うのであれば、まずは、英語学習者のために語いや文法を制限して書かれた絵本や、"Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?"のようなくり返しの多い絵本をたくさん読みます。できるだけ英語のリズムが感じられて英語に特徴的なrhyme(ライム・韻)の美しい絵本をたくさん読んであげてほしいと思います。また、もうひとつおすすめなのが、それと同時に"Sight Words"と呼ばれる子どもの絵本に頻繁にでてくる単語を、一目で認識できるように訓練していくことです。 sightとは"see"のことで「目でみて覚える」、つまりthe をみたら「ザ」、whoをみたら「フー」と読めるように訓練するということです。フォニックスで法則を覚え、a, an, the, this, what, whoなどの例外的な読みをする単語を覚えることで、自分で本を読める力を身につけていくことができるのです。最も大切なのは子どもたちの自分で読みたいという気持ちを大切にすること、そして読める力を伸ばしていってあげることではないかと思います。