※記載されているプロフィールは取材時のものです。

先生が答える WK相談室

日本語で英文を聞きたがるときの答え方

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(会員のかたからの質問)
「これは英語でなんて言うの?」と聞かれます。
ひとつひとつ英語を日本語で説明しながら答えていますが、それでよいでしょうか?
- 3歳3ヵ月女子(双子)の母 -

【質問詳細】
ここ数日前から、「英語だとなんて言うの?」といろいろなことを聞いてきます。
公園で 「おうちへ帰ろうは?」「Let's go home.だよ」
「じゃあ、おばあちゃんの家に行こうは?」
「Let's go to grandma's house.かな。」
家につくと 「おうちについたときは?」「I'm home.よ」
食事のときは 「いただきますは?」「Let's eat.ね」
「おなかいっぱいは I'm full.でしょ?」
そしてふたりでおかわりを 「Spaghetti, please!」と叫んでみたり。
探し物を見つけたときは 「I found it!でいいんだよね?」と聞いてきたりします。
聞かれたときはひとつひとつ答えていますが、そういうやり方で良いのでしょうか?



豊田先生豊田ひろ子先生

東京工科大学教授。専門は言語教育学、児童英語教育、バイリンガリズム。1児(男の子)の子育て真っ最中!ご主人は日本人とアメリカ人のダブル

質問にひとつひとつ答えてあげるのは、知識の習得にとても役立ちます。
日本語で説明してよいですよ。

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監修の豊田先生

3歳頃になると、お子さんの日本語の語いが急増します。発音器官は未熟なので、発音が明瞭ではないことがありますが、聞こえてくる日本語がだいぶわかるようになり、保護者とも会話のやり取りができるようになってきます。「なんていうの?」という質問は、「日本語を学習のツールとして使う」ことができるようになってきたあらわれですね。

同時に、この年頃のお子さんにとっての学習は、依然として自分を中心になされる傾向があります。自分にとって関心のあるものから学んでゆくので、お子さんは教え込まれるときよりも、自分の質問に答えてもらった方が、自然な形で知識が獲得され、学習の達成感もあるでしょう。

ですから、質問にはぜひ答えてあげてください。WKの教材はAll Englishなので、日本語で質問のやり取りをしても、英語のインプット量を圧倒する心配はないと思います。


日本語での質問は、場面理解、意味理解を進めているあらわれです。

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"You should go home now(みんな、今すぐ家に帰らなきゃ)!"
と言われて、あわてて帰って来たMimiたちとMr.Clark。
お子さま自身が「家に帰る」行為と結びつくと、ことばを
しっかり理解して定着させることができます。

さて、帰宅する場面で、お子さんが「おうちへ帰ろうは、英語でなんていうの?」と質問し、お母さまが「Let's go home.だよ」と答えるというお話について、具体的に見てみましょう。お子さんが質問の答え、すなわち英語="Let's go home."をもらうというやり取りから、まず、お子さんが英語に意欲的である様子がうかがわれます。しかし、同時に興味深いのは、その質問が「帰宅する」という特定の場面で起こっていること、日本語でしっかり質問しているということです。このことから、お子さんが頭の中で、母語である日本語=「おうちへ帰ろう」という言葉を帰宅するという場面にしっかりとリンクさせて使っていることがわかります。

幼少期の子どもが言葉を習得するプロセスでは、ある言葉の音(後で文字)に単純にラベリングする(名前づけ)前に、場面や状況、体験を通して、その言葉の意味を理解することが重要です。「おうちへ帰ろうは英語でなんていうの?」という質問によって、「おうちへ帰ろう」という言葉の使われ方を日本語で確認し、英語の表現も習おうとしているこのお子さんは、まさに日本語と英語のバイリンガルへの道を一歩一歩進まれているように思われます。


言葉を体感して習得できるように、質問に答えて手助けしてあげましょう。

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保護者向けペアレンツガイド

お母さまは質問に答えられるのが大変なときもあるかと思いますが、今後も根気強くサポートを続けてください。もし聞かれてすぐにわからないときは、一緒に「なんて言うんだろうね」と考えて、おうちのかたが辞書をひいて答えてもいいのです。おうちのかただって、何でも完ぺきに答えられるわけではない、そうやって調べればわかるんだというプロセスを見せてあげることも、将来お子さんがわからない言葉に遭遇したときに役立ちますよ。各ステージで配布されている保護者向けのペアレンツガイドには、幼少の子どもが遭遇する生活の場面に合わせて紹介されている英語表現があります。これもぜひご活用ください。

教材から楽しく学ばれた会話表現などが、実際に、どのような雰囲気の場面で、どんな人々の表情や思いを伴って使われているのかを、お子さんが体験するのは大事なことです。幼少期の子どもたちは、言葉を体感して習得します。お子さんの方が、この場面こそが、この言葉のイメージにピッタリといった感覚が鋭いかもしれません。

ネイティブとの接触量にもよりますが、4歳頃になれば、日本人とは日本語で「おうちへ帰ろう」、英語のネイティブとは英語で"Let's go home."と使い分けてコミュニケーションする必要性を感じるようになり、使い分ける(code switching)ようになると思われます。4歳や5歳になりますと、だんだん行動範囲が広がり、お友達も増え、生活言語である日本語が圧倒的に使われるようになってきますので、その前に、英語をたくさんたくわえておくとよいですね。