※記載されているプロフィールは取材時のものです。
(会員のかたからの質問)
3歳6ヵ月の娘とWorldwide Kidsを楽しんで約1年が経ちました。おかげさまで、 かなりいい発音でいろいろな英語の意味を理解しつつ言えるようになり、吸収 のよさに驚く日々です。
日本語が飛び出した時期に英語にも触れさせたので、 日本語・英語の区別を付けずに混ぜて話すことが多く、とても自然に英語を受け入れています。ただ、今後年齢があがり、「英語」とわかる時期にはどのよう に教えたらいいのか、「これは日本語ではパトカーで、英語ではpolice carだよ」と伝えることになるのかなど、今後の対応・展開を懸念しています。
また、発音が似ている言葉の教え方も今までは映像を見て自然に習得しているようでしたが、日本語で説明していいものか迷うことがあります。
"We have many..."と本のフレーズを読んであげたら、「え?Maniでしょ、え?Mimi?」と絵を見て娘 が問い返してきたので、とても説明に苦労しました。娘との学習においてアドバイスいただけると助かります。
東京工科大学教授。専門は言語教育学、児童英語教育、バイリンガリズム。1児(男の子)の子育て真っ最中!ご主人は日本人とアメリカ人のダブル
監修の豊田先生
3歳6ヵ月にもなりますと、日本語でも英語でも、言葉の発音をただ真似て音を楽しむだけでなく、その意味を理解したいという気持ちが出てきます。耳にした音が何を意味するのか、子どもなりに、既に習った頭の中の語いカタログを探索し判別しようとします。このような認知的な工夫を「語いストラテジー」と呼ぶことがあります。
物理的な音をただ受容するのではなく、その意味を自分の頭の中で組み立てようとするその行為は、目には見えませんが能動的に話す行為のさきがけとなるもので、今後、自分のメッセージを実際に話すことによってアウトプットしてゆく上で、とても重要なものです。
ですから、言葉の音を自分の知っている言葉の意味にすり寄せて誤って聞いてしまうのは、決してネガティブなことではなく、着実な学習の表れと言ってよいと思われます。子どもが"We have many..."という言葉を聞いて、自分にとって有意味な"Mani"と"Mimi"というキャラクターであると判断するのは、むしろ微笑ましいことで、英語の習得がかなり進んできている証拠であると言えるでしょう。
そのときの説明は、まず"Mani"と"Mimi"、"many"の発音を聞かせて、実際には音が違うことに気づかせること。そして折を見て、一緒に文脈を確認し、"I have Mani/Mimi."の場合と"I have many."では、文の意味が異なること、さらに、後ろの文の意味の方がふさわしいことに気づくように導かれるとよいでしょう。お子さんが、どうしても同じ発音に聞こえると言い切る場合などは、文字を示して、その違いを指摘してあげてもよいでしょう。
文の意味の理解は、Emotional Toysのパペットを使って、実際に2つの文の意味の違いを、遊びを通して見せてあげると効果的です。
たとえば、"Mimi"に"Mani"を抱っこさせて"I have Mani."と言う愛情あふれる表現をします。
次に、Mimiにみかんをたくさん抱えさせて"I have many. I have many, many oranges."と言う欲張りな表現をしてみます。実際に見せてあげて、その違いに気づかせ、違いを一緒に楽しんでみてください。意外と"Mani"と"Mimi"、"many"のような発音の混同が、逆に学習を豊かに楽しくしてくれたりするものです。
私は、息子に冠詞のa に気づかせようとしたときにa bookと聞かせていたら、「あはは、『あぶく』に聞こえる、おっきいの」と大笑いされたことがあるのですが、英語と日本語の間でも、発音の混同が学習のきっかけを作ってくれることがあるようです。
似たような音のことばが、実際にどのようなものを意味しているのか、日本語で意味を説明し確認してあげることは重要です。言葉は単に事物へのラベリング※学習によって習得されるものではなく、事物がどのような意味を持ってラベリングされているのか、その仕組みを知ることで習得が進んでゆきます。
(※ラベリング=名前をつけること)
パトカーと救急車のように同じカテゴリーの違う事物を対照させることも効果的な意味習得方法です。この場合は、パトカーと救急車が向かう場所がそれぞれどこなのか、何を運んでいるのかなどを日本語でフォローしながら、言葉の概念を教えていきましょう。