※記載されているプロフィールは取材時のものです。
東京学芸大学 国際教育センター教授の佐藤郡衛先生のご専門は異文化間教育学。ご家庭では大学生の息子さんと社会人の娘さんのお父さまです。
「もう大きいから、はるか昔のことだよ」とおっしゃる佐藤先生に、お子さんが小さいころのお話をうかがいました。
佐藤郡衛先生
東京学芸大学 国際教育センター教授。専門は異文化間教育学。
Stage 2 Picture Books
"My Day, Your Day"
異文化で暮らす人々のことを小さい子に
伝えるために、佐藤先生からアドバイス
をいただいて作りました。
子育てをふり返ると、いろいろやるということはあまりなかったです。高度経済成長期の時代だから余裕がなかったし、幼児教育という考えもあまりなかったんです。一生懸命やってきて、勝手に子どもが育ったって感じかな(笑)。
自分の専門が異文化間教育学だから、子どもも国際的になるというのはありえないですよね。あえて何かをやるというよりは、自分で主体的に選択できる力をつけられるようにする、それが親の務めだと思ってきました。そのためにいろんなことを与える必要はあると思います。結果としてうまくいったかは別ですけど。
子どもっていろんな側面があるから、いろんなものを与えていかなくてはいけない。この多重知能※の考えは、Worldwide kidsの設計にも活かされていますよね。親が行くところ、たとえば美術館や映画館に連れて行く。そういうことにふれることで、自分に合ったものがみつかればいい。環境を与えるってそういうことじゃないかな。
※多重知能...人間の知性はひとつ(IQ)だけでなく、幅広いものであるという考え方。ハワード・ガードナーによる「多重知能」の理論では、以下のような知性があると言われています。言語的知能、論理数学的知能、身体運動的知能、音楽的知能、対人的知能、内省的知能など。
(参考文献:MI:個性を生かす多重知能の理論)
僕は自分が出かけたければ、とりあえず子どもを一緒に連れて行きました。美術館に行って大泣きして帰ったこともありますよ。それはしょうがないですよ。面倒くさくなって出かけないこともあるけど、どうしても出かけたければしょうがなくまた連れて行きました。一緒に行動するなかで、自分で何かを感じてもらえればよしと。
言うことを聞いてくれるのは小学生までですよ。中学生になると自分の世界があるし。今じゃ「ごちそうするからおいでよ」って言わないと来てくれません(笑)。
Stage 6 Emotional Toys "Explore the Town"
「コミュニケーション力は経験を積み重ねて
獲得していくもの。日本語でも英語でも遊びのなかで
ほかの人とやりとりする機会をたくさん与えてください」
佐藤先生のアドバイスです。
海外にも自分が行きたいから、小学校高学年ごろから子どもを連れて行きました。アメリカ、イギリス、シンガポール...いろんなところに行って、いろんなところを見るというのはすごく子どもにはいいと思います。ことばだけでなく、空気にふれるとか、感覚にふれるとか、いろんな光景を見せることが子どもの教育につながると思います。
でも子どもに記憶ってはっきりとは残っていないかもしれない。子どものころの思い出ってみんな写真で植えつけられちゃうものなんですよね。自分で何かあったとは思うけど具体的には思い出せないから、写真を見ながら「これどうだったの?」と聞いてきますね。
子どもがどうなるのがよいかという正解はない。だから気楽にやったほうがいいのかなと思います。感情をぶつけたり、間違いがあったりしても「ごめん」とか言いながらつき合っていくしかないでしょう。ぼくも感情をコントロールして冷静につき合うこともしてきたし、感情をぶつけたこともありました。
中学生の子がいる知人が言うには、子どもといるとその子がいくつになっても、5~6歳のその子といる気がするらしいんですよ。自分も子ども(社会人と大学生)に対して、小学校の低学年のときのイメージがどこかにあります。子育てはずっと続きますから、どうやって子どもから離れていけばいいのか、子離れのほうが難しいですね。