※記載されているプロフィールは取材時のものです。
3月23日にWK監修の豊田先生による講演会が行われました。プログラムは「小学校の英語教育の動向と幼児期の英語教育」「ワールドワイドキッズ教材活用例」「WK教材活用のポイントとワークショップ」「会員のかたの質問コーナー」を柱に、先生のパワフルなトーク、参加された会員のかた同士のE-toys遊び練習など盛りだくさん。内容をご紹介いたします!
東京工科大学教授。専門は言語教育学、児童英語教育、バイリンガリズム。1児(男の子)の子育て真っ最中!ご主人は日本人とアメリカ人のダブル
文部科学省の発表では、2011年から全国の小学校で小5・小6を対象に外国語活動が導入されることになっています。週1時間のペースで、指導は担任の先生と英語の先生のチームティーチング。英語の先生はネイティブの先生である場合もあれば、英語が堪能な日本人の先生である場合もあるでしょう。外国語活動と言っても、科目ではなく、道徳科のような必修科の位置づけです。「英語ノート」という教科書ではないワークブックのようなものを使って、世界のさまざまな文化、食文化や着ているもの・ことばなどに触れていくような内容になっています。
段階的には、小学校の英語活動は、その後の中学・高校の英語教育のための素地作りの位置づけになります。特に英語の音声教育を小学校高学年で行い、中学・高校の授業で文字面の教育を行っていくカリキュラムになっています。
今後の日本の英語教育は、グローバル化に
対応できる英語力の育成をめざします。
全国の小学校のほとんどは公立です。2011年から全校で外国語活動が導入できるように、全国いくつかの研究校または特区と言われる地域ですでに英語活動が行われています。私立校は全国の小学校の数パーセントですが、昔から外国語教育には非常に熱心です。英語教育だけでなく、宗教関係、たとえば創始者の宗教的な哲学によってはスペイン語やフランス語といった教育にも熱心で、小学校から外国語の授業が入っていたりします。ですから、公立と比べて私立の方がかなり外国語教育のノウハウがあるといっても過言ではありません。小学校の英語活動の内容は、お子さまの進学先によって変わってくると予想できます。
パペットを使ったワークショップもありました。
みなさんの母語は何でしょうか?その母語を習得するプロセスをイメージしてみましょう。0歳、あるいは1~2歳の赤ちゃんには音から入りますね。文字を見せてこれを読んでとは言うのは無理です。音をいっぱい、赤ちゃんがわかるようなリズムで、気持ちをこめて投げかける声かけをするわけですね。そうすると赤ちゃんはお母さんやお父さんの声に反応する。「あぁ、これがことばなんだ」と少しずつ音から吸収して習っていきます。小さいお子さんがわかる、なんか楽しい、あるいは悲しそうだな、困っているな...と気持ちが伝わるような伝え方、音のインプットというのはとても大事なんですね。
音声をたくさん与えてあげること、それも意味ある形で、気持ちをこめて、わかるように伝えていくことは母語ではだれもがやっています。大きくなると忘れてしまいますが、日本語、母語の基礎は、たくさんのやさしいことばをかけてもらってできたと思います。そういうふうに英語の学習も音声から始めるのが理想的です。母語習得同様の流れで獲得すると、英語の質がよりネイティブライクになるといいます。
どうしても英語が苦手とか、聞いていてもわからない、緊張してしまうというのは、いきなり中学校で、文字から覚えなさいと言われる、テストされる、できないとやり直ししないといけないから。アレルギーになるのは当然ですよね。
Stage 4でお届けするE-toys"Food&Clothing"とパペットを組み合わせて、食べ物や洋服の英語を使った
遊びが広がりました。
英語学習というのはある意味長い旅のようなものです。続けないとネイティブライクにはならないという現実がありますが、小さいころから、たくさん音声をわかる形でインプットしてあげる。お母さまやお父さまたちが、楽しいねというような時間を一緒に持ってあげると、(英語学習の)旅が決して苦しいものではなくなります。「あぁ、なんか英語って自分にもできそう」とか「あぁ、なんか楽しかったからもうちょっと習うと何かが見えてくるかもしれない」とか、勇気づけになるのではないかと思います。
技能習得の流れ
幼児期から英語に触れ小学校までに音声面の「聞く技能」・「話す技能」を習得していっても、内容的・認知的な負担は軽いので、それだけでは自分の意見を、難しいテーマでふられた時に発言できません。自分の心の中では言えるけれども英語では言えない。中学・高校以降では、「読む技能」、「書く技能」の鍛錬が必要になってくるわけです。
そうしますと、文法はこういう仕組みになっているとか、こういう抽象的な概念はこういう語彙で表現するとか、こういう関連語のネットワークがあるといった、ボトムアップの学習スタイルが生じてきます。逆に幼児期に優れていたトップダウンで全体を掌握する力はなえてきます。内容的に負荷が非常にかかるので、パーツからヒントを集めて全体をイメージしなくてはならないスタイルになってくるわけです。
早期英語学習のメリットとして、自主学習の素地ができて自立心が育つこともあげられます。早期英語学習では、認知的に簡単な単語学習、単純なくり返し学習で、「あらすごいわね」「上手ね」とほめことばがもらえます。身体学習をするので、外国語なのに気持ちを移入することもできます。大人だと、英語にのせると気持ちが出てこない、霊体遊離みたいなことがありますが、子ども時代はそういうことがおこりません。
それから幼児期は、好奇心や柔軟な態度で、内容的にさまざまな価値観を拒否せずに受け入れることができます。Worldwide Kidsのようなグローバル教材一式に、そういう要素・コンテンツが入っていますので、それを見て、世界ってこういうものなのかなという関心、視野の広がりを幼児期から養っていけるわけです。
たとえば"Really?""Wow!"とか、ちょっとリズムを替えるだけで気持ちが変わりますね?みなさんも試してみてください。声の表情で子どもたちは気持ちに反応します。
Q. 幼い頃に英語を習うと、日本語がおかしくなるのではありませんか?日本人としてのアイデンティティが育たず変な日本人になってしまうのではありませんか?
A. 心配は一切無用です。
日本語、日本文化が優勢な日本で、普通に日常生活を営んでいれば、お子さまの日本語も日本人としてのアイデンティティも問題なく健やかに育ちます。日本語が圧倒的に優勢な環境で育つので、日本語を失うことなく、幼い頃から、英語をプラスαの言語として、付加的に習得することが可能なのです。
子どもとの遊びをみんなで考えて発表。
おうちのかたも楽しむことが大切です!
1~2歳のころは真似が上手ですよね。英語のほうがいっぱい出てきて、日本語が育たないのではと不安になられる方もいらっしゃるかもしれません。たとえば「リンゴ」と"Apple"どちらがいいやすいですか?"Apple"の方が言いやすいですよね。「救急車」と"Ambulance"ではどちらが言いやすいですか?実は"Ambulance"の方が言いやすいんです。「きゅうきゅうしゃ」というのは難しい発音です。発語のための口の筋肉が発展途上の幼児の場合、どちらの言語で言うかは、音の出しやすさで判断されることが多いのです。
"Ambulance"とお子さまが言えたら、「すごい、こんな長い英語の単語が言えちゃった!」「天才じゃないか!」と思ってください。いいんです、そう思っちゃっていいんです(笑)。でもそういう現象が、お子さまの日本語の発達を阻害しているということは全くありません。むしろ日本語が圧倒的に優勢な環境ですから、日本語を失うことなく、幼い頃から英語をプラスαの言語として付加的に習得することが可能なのです。ですから心配なさらないで、英語ができたら、「天才だ!」と言ってほめてあげてください。