※記載されているプロフィールは取材時のものです。

先生が答える WK相談室

子どもへのことばかけで心がけたいこと(沢井先生)

フジテレビの『ひらけ!ポンキッキ』の心理学スタッフを務めたこともある監修の沢井先生は、視聴覚教育メディアの設計と子ども向け映像コンテンツの開発、認知の発達支援がご専門です。ドイツ留学経験のある息子さんの子育て経験談をお聞きしました。


沢井先生沢井佳子先生

チャイルド・ラボ所長。専門分野は視聴覚教育メディアの設計と子ども向け映像コンテンツの開発、および認知の発達支援。ドイツ留学経験のある息子さんの母!

母国語である日本語を、丁寧に正確に

【お子さんの言語習得、特に日本語と外国語の2つ以上の言語を習得するにあたってどのようなことばかけやサポートを実際にされていましたか?】


まずは、母国語である日本語の正確な言い方を聞かせるように、努力しました。と申しましても、たいしたことではありません。親が話すときは、一語文の連発で済ませないように、という程度の努力です。たとえば、朝の仕度をするときに「はやく!」「着替えて!」と言うよりも、「幼稚園バスに乗り遅れるといけないから、はやく着替えなさい」というように、ちゃんと文にして話すようにしよう、と心がけたことです。(こうした、子どもへの説明のパターンは、英国の社会言語学者バーンスタインが「精密コード」と呼んだことばかけの方式です。)

オーストラリア大使館の外交官宅

オーストラリア大使館の外交官宅で。3歳。
英語が話せなくても、異年齢集団の子どもたちと、
見事に遊んではしゃいでいることに驚きました。
遊びが「言語の土台となる力」を、確実にはぐくんで
いるなと確信できました。

とはいえ、毎日の生活では親の私も慌しさに流され、不正確でぞんざいな言い方になってしまうことは多々ありました。しかし、「相手の考えや気持ちを理解するためには、相手をよく見て、聞いて、話の内容を丁寧に想像しなければいけないこと」、そして、「相手に自分の考えを伝えるには、内容や順序を考えて組み立てながら話をしないと、理解してもらえないこと」等々を3歳前後の時期から、折をみて話してきました。

いわば、「言語と理解について考えること」という「メタ認知(認識の仕方について認識すること)」の話題を日常の会話の中に、さしはさんできたと言えるでしょう。こうしたメタ認知的な心構えは、どのような言語を学ぶときにも、また、どのような文化圏の人と接するときにも、役立つものだと思います。母国語で人とやりとりするときにも、相手の察する力に甘えるのではなく、筆舌に尽くしがたいぎりぎりのところまで、ことばで表現しようとする意志をもってほしいものだなぁ、と願ったわけです。

外国語学習は楽しい遊びや作業をとおしてスタート。

お菓子の飾りつけ

英語塾の先生と、お菓子の飾りつけ。
8~9歳ごろ。幼児期は先生の発音を
まねして、見事に美しく発音して
いたのですが、8歳ごろ以降になると、
日本人の生徒同士、同じように発音し
ようと心がけるようになり、日本風の
発音にみずから合わせる時期がありました。

外国語の学習は、息子が2歳から8歳ごろまで、近所に住む米国人の女性の先生のところへ、定期的に通って英語を教えていただきました。わが家で動物の顔のケーキを作ったり、巨大なかぼちゃを包丁で刻んで、ハロウィーンのかぼちゃのランタンを作ったりしたのも、楽しい思い出です。作業をしながら英語のおしゃべりをたくさん聞いたことは、息子にとって、英語を身近なものにしてくれましたし、親も驚くほど美しい発音を、(断片的にですが)聞かせてくれることになったのです。その先生は、大変おおらかで明るいお人柄でしたので、英語を学習するだけでなく、息子は心を開いて、楽しくコミュニケーションする態度も学んだように思います。

【小さい子どもだと日本語もたどたどしいのですが、英語と日本語での混乱はなかったですか?】

息子の言語環境は母国語の日本語が圧倒的で、英語は週に3時間程度の短時間でしたから、日本語と英語との混乱はおきませんでした。また、英語を学ぶときも作業をしたり、遊んだり、というように、動作と共に学びましたので、動作に複数の言語が直接結びつく場合は、複数の言語同士の混乱はおきにくいのではないかと子どもの様子を観察しながら考えました。