※記載されているプロフィールは取材時のものです。
(会員の方からの質問)
DVDやテレビは子どもが夢中になるので、つい家事の間に一人で見せてしまいます。 でも後ろめたい気持ちもあります。子どもにとって意義あるものにするにはどうしたらよいでしょうか?先生は実際にどうされてきましたか?
視聴覚教育メディアの設計と子ども向け映像コンテンツの開発、認知の発達支援がご専門の沢井先生。今回は「DVDの見せ方について」。会員のかたの質問に、専門家として、またお母さまとしてお答えいただきました!
チャイルド・ラボ所長。専門分野は視聴覚教育メディアの設計と子ども向け映像コンテンツの開発、および認知の発達支援。ドイツ留学経験のある息子さんの母!
私は、20代のときからテレビの幼児教育番組の心理学スタッフとして、番組の企画や調査に携わったり、幼児向けの視聴覚教材制作などにもかかわったりしてきました。その中で、常に願い続けてきましたのは、幼児向けの映像を見るときは、ぜひお子さまのそばに、ご家族のどなたかが付き添って、ご一緒に映像・音声を見聞きして欲しいということでした。
先生のアドバイスで当初3人だったキャラクターは
4人になりました。
「子ども・そばにいる大人・テレビ映像」という3つの点をつなぐ三角形(三項関係)が、子どもの認識をはぐくむには、必要なのです。言語の学習は、何かを一緒に見聞きする人がすぐそばにいて、応答してくれることから始まります。
独身時代からそうした調査を続けてきた経験から、わが家でテレビやビデオを見るときは、原則として、常に子どもに付き添って一緒におしゃべりし、画面を指差しながらにぎやかに見ておりました。ときにはおもしろくて親子で長時間視聴になったこともあり、反省しましたが...。
そうした親子視聴の態度はいまだに続いており、テレビのニュースを家族で見るときも親子で時事討論になったりします。つまり、身近すぎる話題からワープしたいとき、テレビは政治から宇宙まで話題を飛躍させてくれる効用がありますね。たとえば、宇宙から見た地球の姿をそのまま肉眼で見た人は、ほんのわずかな宇宙飛行士しかいないはずですが、私たちの多くは地球のイメージを鮮明に頭の中にもっています。それも、テレビやビデオの映像に親しんだおかげといえるでしょう。そうしたかけがえのない学習をもたらす刺激が、映像にはあるのです。
オーストラリア人家族が、先生宅へ遊びにきたとき。
息子さん3歳のころ。年上のお姉さんたちと
よく遊んでいました。
おうちのかたのどなたかがお子さまのそばに付き添って、DVD視聴してほしいと申しましたが、DVDにお子さまが集中している間に、家事をちょっと済ませたいというおうちのかたのご事情もわかります。そのときは、どうか1日30分以内を限度にしてください(これは、およそDVD1枚の長さです)。
そして、やむをえずDVDに子守をさせてしまったあとは、同じDVDを親子でご覧になってお子さんの反応を見ながら、遊んでおしゃべりする時間をたっぷりとっていただけたらと思います。
0歳8ヵ月。くまのプーさんが大好きで、
レーザーディスクをよく見ていました。
子どもは、およそ1歳半を過ぎると、AV機器を自分で操作できることがわかっていますが(息子も、1歳半のときに、すべてのAVの機械操作が、ひとりでできていました)、DVDなどの反復視聴をお子さま任せにするのは避けていただきたいと願っております。お子さまによっては、同じDVDを20回以上も勝手に反復視聴してしまうことがありますので(こうしたエピソードを聞くと、視聴覚教材の制作者側としては、困惑とうれしさの入り混じった気持ちになります)。
テレビ、DVDなどの視聴覚機器は、子どもの世界を教育的に豊かにするすばらしい道具ですが、その道具はおうちのかたとの細やかな「やりとり」があってこそ、いかされるものなのです。